最近「静かな退職」という働き方が注目されています。
これは、会社を辞めるわけではないものの、必要最低限の業務だけをこなす働き方のことです。
実は、この考え方は日本でも広がりを見せており、若手や20代、30代はもちろん、キャリアの中盤にいる40代や50代、さらにはワーママなど、世代や立場を問わず実践している人が増えています。
一体、「静かな退職」をしている人はどれくらいの割合で存在するのでしょうか。
この記事では、静かな退職の特徴やその兆候、具体的なやり方や選ばれる原因について詳しく掘り下げていきます。
また、「静かな退職は何が悪いのでしょうか?」という最も気になる疑問にもお答えします。
プライベートを充実させられるといったメリットがある一方で、その末路としてクビにつながるリスクはないのか、多角的な視点から徹底的に解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
- 静かな退職の具体的な特徴と原因
- 世代別の静かな退職に対する考え方
- 静かな退職がもたらすメリットとデメリット
- 静かな退職を続けることで起こりうる末路
静かな退職は当たり前か?何が悪いかその実態
- 日本での割合は?静かな退職の現状
- 静かな退職の特徴と見分ける兆候は?
- 静かな退職を選ぶ根本的な原因とは
- 静かな退職の具体的なやり方とは
- メリットはある?静かな退職は何が悪いのか
日本での割合は?静かな退職の現状

結論から言うと、日本においても「静かな退職」は決して珍しい働き方ではありません。
もともとはアメリカのSNSから広まった言葉ですが、今や日本のビジネスシーンにも深く浸透しつつあります。
例えば、株式会社マイナビの調査では、20~59歳の正社員のうち44.5%が「静かな退職」を実践している、または実践したいと回答しています。
これは、働く人の約半数が、仕事に対して過度な情熱を注ぐのではなく、割り切った考えを持っていることを示唆するものです。
また、クアルトリクス合同会社の調査によると、特に40代・50代の中堅・シニア層に静かな退職を実践している人が多い傾向が見られます。
これらの層は「積極的に貢献しようとする意欲は低いが、仕事を続ける意思は強い」という特徴があり、全回答者の約13%がこのタイプに該当するとされています。
世界的には当たり前の働き方?
欧米では、キャリアの早い段階でエリート層とそうでない層が明確に分かれる傾向があります。
そのため、昇進を望まない層が必要最低限の業務をこなす働き方を選ぶのは、ごく自然なことと捉えられています。
日本の「誰でも出世を目指す」という従来の価値観が変わり、世界標準に近づいているとも考えられるでしょう。
これらの調査結果から、世代を問わず、多くの人が仕事とプライベートの間に明確な一線を画し、心理的な距離を保ちながら働く「静かな退職」というスタイルを選んでいる現状がうかがえます。
静かな退職の特徴と見分ける兆候は?

「静かな退職」の最も大きな特徴は、会社を辞める意思はないものの、仕事への情熱を失い、契約上定められた必要最低限の業務のみをこなすという点にあります。
与えられた以上の仕事には関わらず、昇進や自己成長への意欲も低い状態を指します。
これは、単なる「やる気がない」状態とは少し異なります。
業務は責任を持って遂行しますが、それ以上の貢献や会社への奉仕は一切行わない、という明確な意思に基づいた働き方なのです。
あなたの周りにも、以下のような兆候を見せる人がいるかもしれません。これらは「静かな退職者」である可能性を示唆しています。
静かな退職の兆候チェックリスト
- 会議や打ち合わせで、自分から意見を言うことがない
- 毎日きっかり定時で退社し、残業を極力避ける
- 自分から挨拶や雑談をすることが少なく、同僚との交流に消極的
- 飲み会や社内イベントといった業務外の付き合いには参加しない
- 自分の担当業務以外のことに無関心で、手伝おうとしない
- 提出物は常に納期ぎりぎりで、クオリティも最低限
もちろん、これらの特徴が一つでも当てはまるからといって、必ずしも静かな退職をしているわけではありません。
しかし、複数の項目に該当し、それが継続している場合は、その人が静かな退職を選んでいる可能性が高いと言えるでしょう。
静かな退職を選ぶ根本的な原因とは

多くの人が静かな退職を選ぶ背景には、複合的な原因が存在します。
主に、以下の3つの要因が大きいと考えられています。
1. 仕事への価値観の変化
かつては「仕事が生きがい」「会社のために尽くす」という価値観が主流でしたが、現代では仕事はあくまで人生の一部であり、プライベートを充実させるための手段と考える人が増えています。
特に若い世代ではその傾向が顕著で、「頑張りすぎない働き方」がひとつのスタイルとして受け入れられつつあります。
2. キャリアの停滞感と将来への不安
特に40代・50代に多い原因として、キャリアの停滞感が挙げられます。
年功序列や終身雇用制度が崩壊しつつある中で、昇進や昇給の道筋が見えにくくなっています。
「これ以上努力しても報われない」という諦めや、当初思い描いていたキャリアとのギャップが、仕事への意欲を削いでしまうのです。
実際にGPTW Japanの調査では、静かな退職を選んだ理由として「努力が正当に評価されず、給与にも反映されないと感じた」が27.3%で2位に入っており、評価への不満が大きな要因であることがわかります。
3. ストレス回避とワークライフバランスの重視
長年の業務で心身ともに疲弊し、責任の重い仕事や過度な業務負担を避けたいと考える人も少なくありません。
精神的なストレスを回避し、家庭や自身の健康、趣味の時間を優先したいという意識が、必要最低限の業務に留める働き方につながっています。
このように、個人の価値観の変化と、それをとりまく社会や会社の制度の変化が複雑に絡み合い、静かな退職という選択肢を生み出しているのです。
静かな退職の具体的なやり方とは

静かな退職は、退職届を出す行為ではありません。
その本質は、「契約以上の貢献を意識的にやめる」という、日々の業務への向き合い方にあります。
より具体的に言えば、「ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)」と呼ばれるような、本質的でない無駄な業務から距離を置くことが、静かな退職のやり方と言えるでしょう。
これには、以下のような行動が含まれます。
静かな退職の実践例
- 時間外労働をしない:サービス残業や、勤務時間外のメールチェック・電話対応は行わない。
- 業務範囲を明確にする:契約書や職務記述書にない業務は、はっきりと断るか、関わらない。
- 無駄な会議や付き合いを断る:形骸化した定例会議への参加を見送ったり、業務に関係のない飲み会を断ったりする。
- 過剰なアピールをやめる:誰も読まない日報を丁寧に書いたり、成果を過度にアピールしたりしない。
ポイントは、やるべき仕事は責任を持ってきちんとこなすという点です。
業務を放棄したり、質を著しく下げたりするのは、単なる職務怠慢であり、静かな退職とは異なります。
あくまでも「決められた範囲の仕事を、決められた時間内で行う」というスタンスを貫くことが、静かな退職の正しいやり方です。自身の心身の健康とプライベートを守るための、ひとつの防衛策とも言えるかもしれません。
メリットはある?静かな退職は何が悪いのか

静かな退職という働き方には、良い面と悪い面の両方が存在します。
どちらか一方の側面だけを見て判断するのではなく、両方を理解しておくことが重要です。
静かな退職のメリット
まず、個人にとってのメリットは非常に分かりやすいものです。
- ストレスの軽減:過度な責任やプレッシャーから解放され、精神的な負担が減ります。
- プライベートの充実:残業が減り、趣味や家族と過ごす時間、自己投資の時間を確保しやすくなります。
- 心身の健康維持:燃え尽き症候群を防ぎ、ワークライフバランスを保つことで、長期的に働き続けやすくなります。
このように、仕事との距離を適切に保つことで、より豊かで健康的な生活を送れる可能性が高まります。
静かな退職は何が悪いのか(デメリット)
一方で、「静かな退職は何が悪いのか」という問いに対する答え、つまりデメリットは、個人と企業の両方にとって深刻な問題につながる可能性があります。
個人へのデメリット
短期的には楽かもしれませんが、長期的には自身のキャリアを危険にさらします。
新しい挑戦を避けるため、スキルアップの機会を失い、市場価値が上がりにくくなります。
その結果、いざ転職しようと思っても選択肢が限られたり、リストラの対象になったりするリスクが高まるでしょう。
企業へのデメリット
静かな退職者が増えると、その分の業務負担が他の意欲的な社員にのしかかり、不公平感から組織全体の士気が低下します。
また、経験豊富な中堅社員が能力を発揮しないことは、生産性の低下や組織の成長鈍化に直結し、若手社員のロールモデルがいないことで人材育成にも悪影響を及ぼします。
結局のところ、静かな退職は個人の幸福と組織の成長という、両立が難しい問題に根差していると言えるでしょう。
静かな退職は当たり前ではない?何が悪いか世代別に考察
- 20代・若手における静かな退職
- 30代・ワーママの静かな退職事情
- 40代・50代の静かな退職の実態
- 静かな退職の末路とクビの可能性
- 静かな退職は当たり前か何が悪いか総まとめ
20代・若手における静かな退職

20代や若手社員の間で「静かな退職」が注目される背景には、Z世代特有の仕事観が大きく影響しています。
彼らは、プライベートな時間を犠牲にしてまで仕事に滅私奉公するという、かつての価値観に強い疑問を抱いています。
実際にJob総研の調査では、20代の46.9%が「仕事よりプライベートを優先している」と回答しており、他の世代と比較して突出して高い結果となっています。
これは、仕事は人生を豊かにするための一つの要素であり、全てではないという考えが根付いている証拠です。
「タイパ(タイムパフォーマンス)」を重視する世代でもあるため、無駄な残業や形骸化した慣習を嫌い、効率的に業務をこなして定時で帰ることを理想とする傾向がありますね。
しかし、この世代の静かな退職には注意すべき点もあります。
社会人としての経験が浅い若手の時期は、様々な業務に挑戦し、スキルや知識を吸収すべき重要な期間です。
この時期に必要最低限の仕事に留まってしまうと、将来のキャリア形成に必要な土台を築く機会を逃してしまう可能性があります。
本人は合理的な選択をしているつもりでも、長い目で見ると自身の成長を阻害し、キャリアの選択肢を狭めてしまうリスクをはらんでいるのです。
30代・ワーママの静かな退職事情

30代は、キャリアにおける責任が増すと同時に、結婚や出産、育児といったライフイベントが重なる時期です。
この仕事とプライベートの板挟みが、静かな退職を選ぶ一因となることがあります。
特に、育児をしながら働くワーママ(ワーキングマザー)にとっては、静かな退職はより切実な問題です。
時間的な制約がある中で、仕事と家庭を両立させるためには、意識的に業務量をコントロールせざるを得ない状況が生まれます。
彼女たちの場合は、意欲が低いからではなく、「頑張りたくても頑張れない」という物理的な理由から、結果として静かな退職のような働き方になっているケースが少なくありません。
ワーママが直面する課題
- 子供の急な発熱などによる突発的な休みへの対応
- 保育園のお迎え時間に合わせた退社
- 残業や出張が難しいことによるキャリアへの影響
- 家事・育児の負担
このように、30代やワーママの静かな退職は、本人の価値観だけでなく、ライフステージの変化という外的要因に強く影響される点が特徴です。
本人の意欲とは裏腹に、不本意ながら貢献度をセーブせざるを得ないというジレンマを抱えている場合も多いのです。
40代・50代の静かな退職の実態

前述の通り、調査データでは40代・50代の中堅・シニア層に「静かな退職」の実践者が多いことが明らかになっています。
この世代の静かな退職は、若手とは異なる、より根深い問題を反映しています。
この世代の多くは、かつての年功序列や終身雇用が当たり前だった時代にキャリアをスタートさせました。
会社への貢献が将来的な昇進や安定につながると信じ、若手・中堅時代に努力を重ねてきたと考えられます。
しかし、社会や人事制度が大きく変化し、思い描いていたキャリアパスを実現できない現実に直面します。
40代・50代が意欲を失う要因
- ポスト不足による昇進の頭打ち
- 役職定年などによる役割の変化
- 成果主義の導入による評価の変化
- 「努力しても報われない」という無力感
キャリアの先行きが見えないことへの諦めや、これまでの貢献が正当に評価されていないという不満が、仕事への情熱を失わせ、「どうせ頑張っても無駄だ」という思考につながり、静かな退職という選択に至らせるのです。
経験と知識が豊富なこの世代が意欲を失うことは、組織にとって大きな損失であり、企業側にとっても喫緊の課題と言えるでしょう。
静かな退職の末路とクビの可能性

静かな退職を続けることで、どのような未来が待っているのでしょうか。
短期的には快適かもしれませんが、その末路は決して明るいものではない可能性があります。
最も大きなリスクは、自身の市場価値が著しく低下することです。
新しいスキルや知識の習得を怠り、挑戦的な業務を避けることで、自身の能力は時代遅れになっていきます。
その結果、会社の業績が悪化したり、事業方針が変わったりした際に、真っ先にリストラの対象となる可能性が高まります。
また、周囲の同僚からの信頼も失います。
意欲的に働く社員から見れば、最低限の仕事しかしない人は「不公平な存在」に映ります。
重要な仕事を任されなくなり、徐々に職場で孤立していくことで、居心地の悪さから精神的なストレスが増大することも考えられます。
クビ(解雇)の可能性は?
日本の労働契約法では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない限り、従業員を簡単に解雇(クビに)することはできません。
そのため、「静かな退職」を理由に即座に解雇される可能性は低いでしょう。
ただし、注意は必要です。
業務への貢献度が著しく低く、改善の指導にも従わない場合や、協調性を欠く態度が業務命令違反と見なされた場合には、懲戒処分の対象となることがあります。
処分の積み重ねが、最終的に解雇の正当な理由と判断されるケースもゼロではありません。
結局のところ、静かな退職は、自らのキャリアの選択肢を狭め、組織内でのお荷物(いわゆる窓際族)となり、最終的には居場所を失うという末路につながりかねない、非常にリスクの高い働き方なのです。
静かな退職は当たり前か何が悪いか総まとめ

この記事では、「静かな退職」が当たり前の働き方なのか、そして何が悪いのかについて、様々な角度から解説しました。最後に、本記事の要点をリスト形式でまとめます。
- 静かな退職とは会社を辞めずに必要最低限の業務だけをこなす働き方
- 日本でも正社員の約半数が実践または実践したいと考えている
- 特に40代・50代の中堅・シニア層に多い傾向がある
- 特徴は定時退社、会議で発言しない、業務外の付き合いを避けるなど
- 原因は仕事への価値観の変化、キャリアの停滞感、ストレス回避など
- メリットはストレス軽減やプライベートの充実
- 悪い点(デメリット)は個人の市場価値低下と企業の生産性低下
- 20代・若手はプライベート重視の価値観が背景にある
- 若手の静かな退職は長期的なキャリア形成にリスクを伴う
- 30代・ワーママはライフステージの変化が原因となる場合が多い
- 40代・50代は努力が報われないという諦めが大きな要因
- 静かな退職の末路はスキルが陳腐化し、職場で孤立するリスクがある
- リストラの対象になりやすく、転職も困難になる可能性がある
- 即座にクビになる可能性は低いが、懲戒処分のリスクは存在する
- 個人の幸福と組織の成長のバランスを考えることが重要